目を閉じて頭の中に強いイメージを作る・・・

風が、匂いが、音がイメージから産まれる・・・

そこには1軒の家があった・・・

窓から見える部屋の中は、青い生物・・・もにゅうが外を眺めていた。

 

視界いっぱいに広がった景色が、イメージと同じであることを確認する。

 

「・・・ゲートは成功したようね。」

 

こんなに明るいお日様を浴びるのなんて何ヶ月ぶりだろう。

この透き通るようなおいしい空気も、いったい何ヶ月ぶりだろう。

葉から落ちる一滴の水滴が、きれいに光った。

大の字に眠って見たら、どんなに気持ちがいいことだろう。

あたしの世界では、それは死を意味する。

あたしの世界に無い自然が、この世界にあった。

 

 

 

さてと、そろそろ行かなきゃね。

正直、もう少しここでのんびりしていたいけど・・・

その気持ちを抑えてあたしは家へ向かって歩き出す。

栄子さんとの戦闘訓練があるからね。

 

 

家に近づくにつれて、あたしは今までのことを思い出していた。

 

 

初めて栄子さんと組み手をした時は、実力の差に驚いた。

あたしの攻撃は何一つ当たる事もなく、魔力無しでは何もできない自分を疑った。

 

 

2回目の組み手の時、いきなり魔力無しの戦いは辛いでしょうと、栄子さんは魔力を使ってくるように言ってきた。

少しずつ魔力を使わなくしていけば良いと言ってくれたのを覚えている。

あの時は嬉しかった。

・・・でも、あの時シャドウボールがスコップで跳ね返されたのは、すごいショック受けたわよ・・・・・

 

 

何度ともなる戦闘訓練は、次第に組み手ではなく、実戦練習と呼べるものになった。

徐々に、魔力無しでも攻撃を避ける、ながす、受け止めることができるようになっていった。

 

 

最近では、ナイフを使うことを教わった。

魔法と違って、魔力を練る必要がないから、弱い者相手の狩りだと楽になった。

 

 

家の前まで来て、あたしは我に返った。

ええっと・・・・どうするんだっけ?

扉の前で立ち尽くす。

あ、そうか、インターホンとかいうやつね。たしかこれを押すのよね?

どうもこのインターホンとかいうシステムは苦手だ。

ボタンを押すとピンポーン♪と音がなる。

その音で訪問者を知らせるらしい。

 

数秒して、扉が開いた。

「いらっしゃい、闇呪猫さん。早かったですね。」

黄色っぽい髪の少女が笑顔で歓迎してくれた。

「こんにちは、栄子さん。はい、御土産。狩りで取って来た肉よ♪」

御土産を手渡す。

「え、良いんですか?」

「遠慮しないで? 焼いて食べるとおいしいから。」

「じゃあ、ありがとうございます♪」

栄子さんの笑顔を見て、あたしも嬉しくなった。

この笑顔が見られるんなら、また肉を持ってこようかしら。

 

「もにゅうさん、ちょっと行って来ますねー!」

栄子さんが叫ぶと、奥からすぐに返事が返って来た。

「あまり遅くならんよーになー!」

「はーい!」

 

栄子さんが、あたしを見て笑顔で言った。

「じゃあ、行きましょう。」

行き先はもちろん訓練するための広場。

家から徒歩2分。

 

 

広場に着くなり、栄子さんはあたしから間合いを取った。

そしてあたしを見据えるなり口を開いた。

「闇呪猫さん。たまには全力でお手合わせしてみませんか?」

ぜ、全力!?な、何言ってるの!??

「あ、成長状態になって構いませんけど、それ意外の魔法はできるだけ勘弁してくださいね?あくまで格闘の訓練ですから。」

・・・・・栄子さんが何を考えているのかわからない。

あたしの今の全力を試すつもりなんだろうか。

「・・・わかったわ。」

魔力を集中し、一気に体の成長を促し、一瞬にして成長状態へと変化した。

同時に、全身から力が溢れた。

全運動能力が活性化され、魔力がみなぎる。

 

 

「それでは、手加減はしません。行きますよ!!」

命がけの実戦訓練が、今、始まった・・・